桂師匠の「うなぎや」

桂師匠の「うなぎや」
「おいおいおいおい、おい」
「何でございますか」
「何でございますかやないがな。何してんねん、何してんねん。おい、え、道の真ん
中で何してんねん」
「私ででございすか」
「私でございますか一って、他に誰もおらへんやないか、お前や、お前や、何して
んねん」
「わったしですか」
「わったしですか一って、お前ゃちゅうねん。何してんねん」
「立っているんです」
「えっ」
「立っているんです」
「バカなこと言うな、お前。立っているんです。そら見たらわかるがな、お前、、え
え。立ってんのはわかってるけどな、立って何してんねんちゅうねん」
「私ですか」
「お前しかおらへんやないか、お前。立って何してんねん」
「私ね、立って立っているんですけどね」
「パカなこと言うな、おい、え。立って立ってるちゅう妙な言い草があるか。
や、ちよっとっき合いし、一杯飲まそ」
「何でございますか」
「一杯飲ましたろっちゅうねん」
「結構です。お断りします」
「パカなこと言いないな、お前。一杯飲ましたるって結構な話やないか」
「いやーそれがあんまり結構じゃないです。「一杯飲ましてやるからっき合いなさい」
っていう言葉には、ちよっと懲りているんです」
「一ちよっと懲りているんです一って、何や?何ぞあんのんかい?」
「もう十日ほど前の話でございますけど、私、やはり十日前も今日と同じように、こ
こへボーッとこうして立っていたんです」
「ほうほう」
「そこへ徳さんがやって来たんです。あなたの代わりに徳さんがやって来たんです。
今日はあなたが来たんですけど、十日前は徳さんが来たんです」
「はあ、なるほど。そんでどうしたい」
「徳さんがね、「お前何してんねん一とこう私に尋ねたんです」
「なるほど一」
「で、私一立っているんです一って言ったんですね。そうすると徳さんが「パカなこ
と言うな、立ってんのは見てわかるがな、立って何してんねゃちゅうこっちや一云う
さかい、私「立って立っているんです一というような、今日とほんとに同じようなこ
とがございました」
「フフン、お前ちょいちょいこうして道の真ん中立ってんねんな、おい。ほいでどう
したい」
「ほいで、あんたとおなじように、「おい、若いもんが道の真ん中にボーッと立っな一
一杯飲ましたろ一と、あんたと同じようなこと言ってくれたんです」
「結構な話やないかい」

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